教員の1冊『花びら供養』
推薦の言葉(保育科 学科長 中澤香織)
本学教員からのご紹介です。
水俣病は誰もが知っていると思います。私も歴史的な知識はありましたが、2015年に水俣市を訪ね、教科書に書かれたできごとではなく、患者と家族の生活の中にある水俣病を初めて知りました。本書は、水俣病の記録『苦海浄土』で有名な石牟礼道子さんの随筆集で、タイトルは、胎児性水俣病の坂本きよ子さんのお母さんの語りによるものです。手足の拘縮が強く、歩くことも話すこともできないきよ子さんが縁側から落ちて庭を這う。「たまがって駆け寄りましたら、かなわん指で、桜の花びらば拾おうとしよりましたです。曲がった指で地面ににじりつけて、肘から血ぃ出して、『おかしゃん、はなば』ちゅうて、花びらば指すとですもんね」「花びらば一枚、きよ子のかわりに、拾うてやっては下さいませんでしょうか。花の供養に」
幼子のように抱きかかえ世話を要する子が花に魅かれ拾おうとする姿、学校へ通うことも将来を描くこともできず親よりも先に亡くなる、そして親もまた同じ病でこの世を去る。水俣の記憶が著者の言葉を通して、静かにそしてしっかりと胸に浸み込んできます。ぜひ手に取ってみてください。
書名:花びら供養
著者:石牟礼道子(いしむれ みちこ)
出版社:平凡社
出版年:2017年
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