教員の1冊『たった、それだけ』

2019.8.19(月)

推薦の言葉(音楽学科 講師 外山啓介)

たった、それだけ

たった、それだけ

​本学教員からのご紹介です。


贈賄の容疑をかけられて失踪した男と、取り残された妻と娘、男の姉など、6人の登場人物のそれぞれの視点から綴られた、連作短編集です。
「生きていくのが辛いと思うほどのこと、自分が壊れてしまうと思ってしまうほどのことであれば、そこから逃げてしまえばいいのだ」という考えが鍵になり、ストーリーが展開します。
登場人物の一人の「かまわないじゃないか。逃げているように見えても、地球は丸いんだ。反対側から見たら追いかけてるのかもしれねーし。」という言葉には、思わず胸が熱くなりました。
読み進めるのが辛いと思うほど暗い内容が続きますが、登場人物たちがその後幸せになっていくような姿を予感させる最終章に救われる気がします。
普段日常の中で見過ごしてしまうようなひとつひとつのことを大切にして、前を向いて進んでいこうと思わせてくれるような作品です。

書名:たった、それだけ
著者:宮下奈都(みやした・なつ)
出版社:双葉社
出版年:2017年

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