教員の1冊『借りの哲学』

2018.8.20(月)

推薦の言葉(社会学部 学部長・地域社会学科 学科長 西脇裕之)

借りの哲学

借りの哲学

本学教員からのご紹介です。

 本書はシェイクスピアの『ヴェニスの商人』や『新約聖書』にあるタラントのたとえ話など、さまざまな物語を「借り」という視点から論じたエッセイです。著者の構想は「借り」をもとにした社会づくりにまで広がりますが、その根本にあるのは、「借りは他の人びとへの贈与のきっかけとなる」というアイデア。
 本書を読んで筆者は2年前に放送されたTV版「わたしを離さないで」(原作:カズオイシグロ)の、次のようなエピソードを思い出しました。心臓移植ともなればドナーはすでに亡くなっており、もはやお返しはできません。臓器を受けた側はドナーに対して永遠の借りを背負うことになります。その人はどうしたでしょうか。そのドナーが誰なのか調べてもらい、その後生まれた自分の子どもにドナーと同じ名前をつけたのです。永遠の借りはわが子に対する見返りを求めない贈与としてお返しされます。
 さまざまな物語の連想へ、そして社会の構想へと誘う好著です。

書名 :借りの哲学
著者 :ナタリー・サルトゥ=ラジュ著(高野優(たかの・ゆう)監訳、小林重裕(こばやし・しげひろ)訳)
出版社:太田出版
出版年:2014年

・本はここにあります