教員の1冊『TN君の伝記』

2017.9.11(月)

推薦の言葉(学長 髙橋肇)

学長からのご紹介です。

 この本に出会ったのは、確か修士課程の大学院生のときだったと思う。当時、私は政治学を専攻する大学院生で、学部生たちと一緒に政治学サークルをやっていて、そこで出会った一冊である。政治学サークルといっても、隔週一回程度の読書会である。昔は学生たちが自主的・自律的に取り組む授業外の自主ゼミというのが盛んであった。
 本書は、「小学校上級以上」を対象とした作品であるが、「子供向けの本」というよりも「子供でも読めるおとな向け(全世代向け)の本」である。内容は、「T・N」がイニシャルの、実在した著名な人物の伝記である。本書において、実名は最後まで明かされない。なぜか。
 著者のなだいなださんはこう書いている。
「ぼくの知ってもらいたいのは、彼の名前ではなくて、彼がどんなふうに生きたか、ということだからだ。」
 人は、名前を知っただけでその人を知った気になってしまう。でも大切なのはその人がどう生きたかということだ。
 私の専門は政治学なので少しは政治に関連する本を紹介したいと思い、この本を選んだ。ままならない社会と政治の現実、そして人間の生き様についていろいろと考えさせられる一冊である。こんな時代だからこそ、ぜひ学生のみなさんに読んでほしいと思う。
 
書名:TN君の伝記
著者:なだいなだ
出版社:福音館書店
出版年:2002年

本はここにあります