教員の1冊『道徳性の起源』

2017.2.20(月)

推薦の言葉(音楽学科 教授 鈴木富士雄)

道徳性の起源

道徳性の起源

本学教員からのご紹介です。

 私が担当する授業(道徳)の中で学生のみなさんに紹介している1冊です。この本の中で、著者はチンパンジーと近縁種のボノボの社会的行動から、私たち人間に求められる道徳性の由来についても言及しています。
 悲しむ仲間への慰め、苦境の仲間の救助、仲間同士の争いの阻止と喧嘩の仲裁。ボノボの社会で見られる本能や欲望の制御などは、人間社会の道徳的行為と重なります。
 人間は生物の中で特別な存在(理性を持つ動物)とみなすことが一般的です。このことから人間が備えるべき道徳性(人格的特性)も、人間固有のものであり、それは後から教育によって獲得するものと考えられています。しかし、この本は、道徳性の起源は人類の進化の早い時期に遡り、それが発達してきたことを示唆しています。
 人間固有の道徳性の存在を否定するものではありませんが、私たちが道徳教育を議論する際、「道徳性は人間以外の動物にもある」という本書の内容に注目してみるのも面白いと思います。

書名:道徳性の起源 : ボノボが教えてくれること
著者:Frans de Waal
訳者:柴田裕之(しばた・ひろゆき)
出版社:紀伊國屋書店
出版年:2014年

本はここにあります

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