教員の1冊『貝の火』(復刻版)

2016.7.6(水)

推薦の言葉(音楽学科 教授 石飛道子)

音楽学科 教員からのご紹介です

 よい本というのは、どんなに古くなっても、「新しい」という要素を必ずそなえているものです。この大谷大学の図書館で、復刻版の宮沢賢治の本に出会えたとき、胸がドキドキしました。昭和二十二年十二月五日に発行された小さな童話集です。値段は定價四十圓とあります。挿絵も入った当時のままの姿で、この本は一九九五年に再び世に出ました。「まへがき」のほかに七つのお話が入っています。
 わたしは、保育科の学生さんたちと一緒に旧漢字や旧仮名遣いに苦労しながら、「貝の火」のお話を読みました。
 宮沢賢治は、大乗経典の『法華経』に傾倒し、その教えの真髄を彼の童話や詩の中に次々と表現していきました。あらゆる生きものをありのままに見つめる「諸法実相」(あらゆるものがそのままその通りであること)をテーマにしているのではないかと、わたしは思っています。あたたかくて優しいのに、悲しくて時に厳しい不思議な賢治の世界を、どうぞ図書館の児童図書コーナーでご覧になってください。


書名:貝の火(復刻版)
著者:宮澤賢治(みやざわ・けんじ)
出版社:シグロ
出版年:1995年(絶版)

本はここにあります

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